1887

OECD Multilingual Summaries

Economic Policy Reforms 2017

Going for Growth

Summary in Japanese

Cover
全文を読む:
10.1787/growth-2017-en

経済政策改革2017

成長に向けて

日本語要約

多くの政府が直面している低成長の罠から脱し、経済成長のメリットを大多数の市民に行き渡らせようとするならば、政府には改革の手を緩める余裕はない。この2年間、世界の成長率は約3%と横ばいで推移しているが、これはその前の10年間の平均的な成長率である約4%を大幅に下回っている。この差の大半は中華人民共和国などの新興市場経済諸国の減速によるものであるが、金融危機以降のOECD諸国の平均成長率は2%未満が常態化しており、一向に回復しない需要と投資の低迷が今後も潜在成長率の足を引っ張ると見込まれている。

より健全な成長を模索する中、政府は大きな政策課題を抱えている。生産性の伸びは、金融危機以降、大幅かつ広範囲にわたり低下しているが、これは、多数の人口の所得が停滞し、構造改革に対する国民の支持を損なっていることを意味している。全体の失業率は大多数の国において徐々に低下してきているものの、一部の国々では若年層と低技能労働者の雇用見通しは暗く、頻繁に職を失う恐れがある。これらの課題を克服するには、マクロ経済政策の支援を受けつつ、整合性のある構造改革戦略を策定し、広範な政策分野にわたって集合的な措置を講じる必要がある。

『成長に向けて』は、構造政策改革と経済実績に関するOECDの専門知識に基づき、政策決定者に対して、力強く包摂的な成長を実現するための優先課題として特定された改革分野に関する具体的な勧告を提供するものである。優先課題は、製品・労働市場規制、教育と訓練、税制・移転制度、貿易・投資ルール、イノベーション政策などを幅広く網羅している。『成長に向けて』の枠組みは、持続的かつ均衡の取れた成長を実現するための各国の成長戦略のモニタリングなどを通じて、G20諸国による構造改革課題の推進を後押しすることに貢献している。

本報告書は、『成長に向けて』に盛り込まれている政策勧告に関連した分野における、2015~2016年の構造改革の進捗状況を審査したものである。こうした背景のもと、本報告書は、OECD諸国及び一部の非OECD諸国に関して、実質所得を引き上げるとともに、大多数の市民に恩恵をもたらすために構造改革が必要とされる新たな優先分野を特定している(第1章)。そのため、優先的政策を選別するための枠組みは初めて、平均所得の伸びの原動力である生産性と雇用と併せて、包摂性を第一義的な目標と見なしている。この目的のため、包摂性の定義として広義の包摂性が採用されており、社会的弱者の労働市場への包摂、教育における男女格差と平等、医療の成果から、不平等と貧困、雇用の量と質などの側面まで包含している。本報告書は、包摂性に関わる政策課題と『成長に向けて』の優先的改革に反映されている潜在的対策を包括的に評価している(第2章)。各国の優先課題と基本的な勧告は国別ノートで論じられている(第3章)。

2015年以降の構造改革の進捗状況

・構造改革のペースはこの2年間で減速し続けており,今や金融危機前の水準に戻っている。この全体的な失速により各国間の大きな差が見えにくくなっている。

  • 改革が減速しているのは、この2年間で特に積極的に改革を進めてきた国々(メキシコ、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、ポーランド、スペインなど)であるが、それまでさほど積極的に改革を進めてこなかった他の国々(オーストラリア、インドネシア、スロベニアなど)でも改革は減速している。
  • 改革の動きがとりわけ強まっているのは、それまで最も積極的に改革を進めてきた国以外の国々(ベルギー、チリ、コロンビア、イスラエル、イタリア、スウェーデン、オーストリア、ブラジル、フランスなど)である。

・改革の減速が特に顕著なのは、教育やイノベーションなど、労働生産性への影響が特に大きい政策分野である。生産性の伸びが持続的かつ広範に低下していることを考えると、これは懸念材料である。

・プラスの側面としては、女性に対する就労障壁を削減し、または労働に対する税の楔(タックスウェッジ)の低減によって、特に低賃金労働者の雇用創出を促進するといった目標に関する『成長に向けて』の勧告に関連した改革が増えていることである。これらは、成長志向型の改革が包摂性の向上も促進する分野である。

・政府は総じて具体的な改革の取り組みを特定の政策分野に集中させる傾向があり、政策の相乗効果や改革の相互補完性から得られる潜在的なメリットを取り逃す恐れがある。改革の提示方法を改善すれば、改革は実行し易くなり、成長と雇用創出に対する改革の影響を最大化するとともに、所得格差を是正する助けにもなる。

包摂的な成長のための新たな優先的改革

・長期的な生活水準の向上には生産性の上昇が重要であり、大多数の国にとってその課題には困難が伴うことから、1人当たりの労働生産性を引き上げ、恩恵が国民の間で幅広く共有されるようにするための、より多くの優先的改革が明らかにされている。教育、製品市場競争、公共投資などの分野の措置が、これまでの『成長に向けて』よりいっそう重視されている。

・特に、革新企業の参入と成長を促進し、質の高い教育が平等に受けやすくなるよう促し、女性と移民を労働市場に取り込み、インフラ投資を強化し、労働者の訓練及び活性化策を改善することが、より力強くより包摂的な成長を実現するために特定されている、最も一般的な政策課題である。

・生産性の向上と雇用の増加を追求することと、包摂性との間には、強力な相乗効果があると考えられる。実際、適切かつ包括的に実施されれば、本報告書で勧告されている優先的政策の約半数で、所得を引き上げ、社会でその便益を幅広く共有することができる。

・成長の恩恵を社会により広く行き渡らせるために、政府は質の高い教育と技能向上のための訓練を幅広く利用できるようにし、雇用の量と質を改善し、所得格差や貧困の削減における税制と移転制度の有効性を強化することなどに重点的に取り組むべきである。

  • 教育の場合、若者が最善のスタートを切り、教育を受ける全期間にわたり必要な支援を受けられるよう、就学前児童から大学生までの若年層のニーズに取り組むことが、優先課題に含まれている。重視されているのは、機会の質を高めることと技能に対する需要の変化に応じる労働者の適応力を確保することである。
  • より多く、より質の高い雇用を創出するには、新興経済諸国に見られる非公式労働を含め、労働市場の二重性や断片化の問題に取り組む必要がある。
  • 多くの国には、社会的支援を最も必要としている個人や家族を保護するように社会移転制度を設計する一方で、労働が所得分布の最下層の人々に報いるようにするとともに、高所得世帯にのみ恩恵をもたらす減税や税控除を制限する余地がある。

© OECD

本要約はOECDの公式翻訳ではありません。

本要約の転載は、OECDの著作権と原書名を明記することを条件に許可されます。

多言語版要約は、英語とフランス語で発表されたOECD出版物の抄録を 翻訳したものです。

OECD

OECD iLibraryで英語版全文を読む!

© OECD (2017), Economic Policy Reforms 2017: Going for Growth, OECD Publishing.
doi: 10.1787/growth-2017-en

This is a required field
Please enter a valid email address
Approval was a Success
Invalid data
An Error Occurred
Approval was partially successful, following selected items could not be processed due to error