1887

OECD Multilingual Summaries

Development Co-operation Report 2017

Data for Development

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10.1787/dcr-2017-en

開発協力報告書 2017

開発のためのデータ

日本語要約

データは、国連の持続可能な開発のための2030アジェンダを実現し、誰も取り残されることがないようにするための必要条件である。「開発協力報告書2017」は、開発のためのデータに焦点を当てているが、それは良質でタイムリーかつ細分類されたデータが、開発の最終目標である人々の暮らし良さの改善と貧困との闘いを達成する上で不可欠だからである。しかし、開発途上国ではその国と人々についての基本データが依然として不足しており、この差を埋める意欲も能力も弱いため、達成できない恐れがある。

持続可能な開発目標(SDG)は、世界中の国々の国家統計制度に多くを要求している。多くのOECD諸国を含むほとんどの国々は、国連のグローバルSDG指標枠組みに含まれる多くの指標を作成するためのデータ収集をまだ開始していない。この問題は、統計に関する能力が低い多くの開発途上国では、さらに深刻である。例えば、開発途上国77カ国には、貧困に関するデータも十分に揃っていない。出生に関するデータがある国の割合は世界全体でわずか56%で、その内90%の国には完璧なデータがあるが、サハラ以南の国々では15%、南アジアでは33%、東南アジアでは36%しか出生データを持っていない。国連の官庁統計の基本原則に沿った国家統計法がある国はわずか37カ国である。世界的なモニタリングという目的と、国の政策策定という目的とのバランスを取る必要性を含め、深刻な方法論と戦略的な課題に対処しなければならない。

現在最も意欲的な開発計画である2030アジェンダにテクノロジーの力を収斂させれば、空前のチャンスが得られる。本報告書では、開発途上国とその開発協力のパートナー諸国・機関がその機会を捉えて、データ格差をどのように埋め、またリスクを軽減するかを分析している。新たなテクノロジーと、いわゆるデータ革命のおかげで、政策当局が情報に基づいた政策選択と優先順位付けを行う上で必要とするデータが以前より容易に、素早く、安価に作成できるようになっている。しかし、単にこれまでより多くのデータを作成するだけでは不十分である。データは政策策定、監視、説明に有益なように変換され、分析され、用いられなければならない。

データ革命により政府と国家統計局は、新たな情報源からデータを得てより有益なデータを作成する機会を得ている。この新たな情報源は公式統計に代わるものではなく、補完、強化できるものである。いくつかの開発途上国はすでにデータ革命に着手して良い結果を出している。エチオピア、南アフリカ、スリランカ、ウガンダは、コンピュータ支援による個人調査の端末(コンピュータ端末その他の携帯端末など)を用いて全数調査と調査データ収集の効率と精度を改善している。地理空間データは、国家統計制度が社会経済状況と環境の現状を監視する一助となり、地理的細分化を可能にし、地理的位置データをより動的なものにすることができる。

本書は、持続可能な開発のためのデータ格差を埋める方法を明らかにしている。開発途上国ではデータによって開発が可能になることを保証するために、強い政治的リーダーシップが求められている。その中には、開発のためのデータの必要性を宣伝する一方で、データが良質な基準に基づいて作成され、プライバシーと守秘義務を守っていることを保証することが含まれる。本報告書では、持続可能な開発のためのデータの力を最大限有効活用するために、以下の6つの具体策を提案している。

データに関する行動 1. データへのニーズの変化に沿った統計法、規制、標準を作成する。

世界の発展と個々の市民に有益な包摂的データ体系を構築するために、制度的、法的枠組みをこの目的に沿わせる必要がある。データの作成と利用に関わる官民の関係者と市民社会、機関の数が増えていることから、明確な法的、倫理的、質的標準と手続きが緊急に求められている。これらは、データの従来からの情報源と新たな情報源の利用を規制し、良い政策と開発の成果に情報を与える上で必要な信頼を醸成すべきである。

データに関する行動 2. データのための資金の量と質を改善する。

統計制度への投資は、開発途上国とその開発協力パートナーの双方にとって戦略的優先事項でなければならない。より多くのより良いデータへの需要の高まりに国家統計制度が応えられるようにするには、予算を増やす必要がある。データを開発協力のための分野横断的な優先事項とすることで、資金提供者はそれを国、地域、そして世界全体の開発公約を果たすために不可欠なインフラの一部と見なすようになる可能性がある。

データに関する行動 3. 新たなアプローチにより統計能力とデータ理解力を高める。

統計能力開発のための新たな、より包摂的なアプローチを開発、運用して、データを収集する能力の構築だけでなく、国家統計局がデータ体系内で進化する多角的な役割を果たし、データと統計のための制度的に実現可能な環境を改善する能力を構築する必要がある。

データに関する行動 4. 「データ協定 (data compacts)」あるいはその他の調和の取れた国主導のアプローチにより、効率と影響力を高める。

開発途上国は、データ作成者と利用者との間の互いに信頼できる包摂的なパートナーシップを通じて、国の政策策定と国際的なモニタリングのためにデータを作成するというインセンティブをより良く調和させるべきである。データへの投資と統計制度への支援を調和、統一させるためにデータ協定を結ぶことは、将来性のあるアプローチである。それがあらゆる関係者のニーズに応え、また共同で実績に基づいた行動計画を実施するための相互の説明責任を育成できるように、さらに試験をする必要がある。

データに関する行動 5. 持続可能な開発目標に向けた進捗を監視するために、国主導の結果データに投資し、それを活用する。

国際開発の関係者は、旧態依然としたアプローチを捨てなければならない。自分たちの報告義務、説明責任に合うデータを集めて利用するのではなく、国が主導する戦略とデータ体系を支援する必要がある。そのためには明確なビジョンとパラダイムをもって、結果を全ての援助に帰する圧力に対処する必要がある。それはまた、どのような独立したデータ収集の取り組みから得られた結果でも、あらゆる開発関係者が利用できるようにし、開発途上国政府の統計目標と調和するようにするということである。

データに関する行動 6. SDGの資金調達全体を理解するために、より良いデータを作成、利用する。

開発金融に関するデータも改善する必要がある。つまり、質の高い開発金融データを利用可能にし透明性を高め、開発途上国が自国の国家開発戦略と優先事項を計画し予算を組めるように指導するという目標に向けて方法論と標準を改善することで、総合的な資金調達の全体像を作成するということである。

© OECD

本要約はOECDの公式翻訳ではありません。

本要約の転載は、OECDの著作権と原書名を明記することを条件に許可されます。

多言語版要約は、英語とフランス語で発表されたOECD出版物の抄録を 翻訳したものです。

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© OECD (2017), Development Co-operation Report 2017: Data for Development, OECD Publishing.
doi: 10.1787/dcr-2017-en

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