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OECD Multilingual Summaries

OECD Digital Economy Outlook 2017

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OECDデジタル経済アウトルック2017

日本語要約

各国政府はデジタル転換がもたらす機会と課題に気づきつつある

デジタル転換は経済を活性化する可能性を秘めており、今や世界的な目標の上位に挙げられている。OECD諸国は、2016年にカンクン(メキシコ)で開催されたデジタル経済に関する閣僚会合において、その目標を設定した。それらはデジタル転換がイノベーション、成長、社会の繁栄にもたらす恩恵を最大化すべく、デジタル転換の政策がもたらす結果に注力し、計測手法を改善するとともに、全政府的アプローチのための統合的政策枠組みを整備しつつある。各国とも国家デジタル戦略(NDS)の実施という点では順調に進展しているものの、依然として調整面が大きな課題として残されている。デジタル問題専従の高官や機関にNDSの調整を任せている国はわずかしかない。

危機の余波が続いているにもかかわらず、情報技術サービスは引き続き成長し、良好な見通しに拍車をかけている

世界経済危機以降、OECD諸国の情報通信技術(ICT)部門全体の付加価値は、全産業の付加価値総額と比例して減少している。しかし、ICT部門の内訳を見ると、電気通信サービスとコンピュータ・電子機器製造の付加価値が減少している一方、情報技術(IT)サービスのそれは増加し、ソフトウエア関連(software publishing)でも横ばいで推移している。この対照的な傾向はOECD諸国のICT雇用者数に反映されており、ICT向けベンチャーキャピタル投資の比率-景況感指標-が2000年のピーク水準に戻っているため、今後も続く見込みである。ICT部門は依然としてイノベーションの主要な牽引役であり、OECDの企業研究開発費に占める割合は最大で、世界全体の特許出願総数の3分の1以上を占めている。

急速に整備されつつある通信インフラとサービスは、データの新たな増加に備えて性能が高まっている

通信市場の成長は需要と、また多くの国々においては競争、イノベーション、投資を刺激する規制枠組みの適応に動かされている。電気通信投資の対収益比は上昇しており、事業者は光ファイバーのネットワークへの利用をさらに進めている。固定ブロードバンド、モバイルブロードバンドとも、平均価格が低下し、契約者数は増えている一方、一部の国においてはモバイルデータの利用が急増している。電気通信と放送の収斂は企業合併・買収(M&A)を推進するとともに、規制枠組みや制度を改正するきっかけとなっている。1Gbpsというブロードバンドの速度はもはや格段に速いとは言えず、ネットワークに常時接続する車(connected vehicles)や自動運転車などから得られるデータの新たな増加をにらんで、10Gbpsの最初の商用サービスが開始されている。

ICT利用は増え続けているものの、国際的にも企業間、個人間でも利用状況にバラツキがある

個人の平均的なICT利用は過去最高に達しているが、依然としてその利用状況は国や社会層によってバラツキがあり、特にネットショッピングやネットバンキングなど、より高度なモバイルインターネットの利用については顕著である。利用が最も遅れているのは高齢者と低学歴層である。各国政府は職業訓練や初等・中等教育に力を入れており、特に学校への機器及びネット接続の導入に公的費用を投入している。一方、利用者はネットの安全性やプライバシーを懸念しており、このいずれもが高学歴層を含めてインターネット利用の主な障害となっている。企業の中では、中小企業が基本的なものでもより高度なものでもICTの利用において立ち遅れている。クラウドコンピューティングとビッグデータ解析の利用は、もともと少なかったとはいえ、急速に伸びている。生産現場におけるロボットの利用は増えているが、これまでのところごく一部の国に集中している。

デジタルイノベーションと新たなビジネスモデルが、雇用や貿易の転換を推進している

データ主導型のイノベーション、新たなビジネスモデル、デジタルアプリケーションは、学術、政府、都市や、医療や農業などの部門の営みを変えつつある。デジタルイノベーションを支援する政策は、イノベーションネットワーク、資金調達、データ(再)利用を重視し、ICT、知識資本、データ解析への投資にはさほど大きな関心を払わない傾向がある。デジタル転換の影響は、様々な部門における雇用の破壊と創出、新たな就労形態の出現、特にサービスの取引慣行の見直しに現れている。これらの影響に対応すべく、多くの国々の政府は労働法や貿易協定の見直しを進めている。

生活と就労の場でICTを有効活用するには、ICT分野の専門技能と汎用的技能を、より良い基礎的技能によって補完することで高める必要がある

生活面や就労面においてICTを効果的に利用するには十分な技能が必要とされる。「ITスタッフ」は、特にサービス業の雇用主が求人困難としている上位10職種の第2位に挙げられているが、ICTの専門的技能の不足については、少なくとも欧州の場合は、ごく一部の国々に限られているようである。一方、ICTの汎用的技能は、ICTを日々利用する多くの労働者に不足しており、同様に問題解決や通信などのICTの基礎的技能も不足しているが、こうした技能は、転職する際にますます必要とされるようになっている。一部の国々はICTの訓練という現在の優先課題を期待される技能ニーズに合わせるためのプログラムを実施しているものの、これまでに包括的なICT技能戦略を採用している国はほんのわずかしかない。

ネットの安全性とプライバシーに関する懸念がICT導入や商機の足かせになっている

ICT利用の増加に伴い、企業も個人もデジタルの安全性とプライバシーのリスクの増大に直面している。特に中小企業はデジタルの安全性に関わるリスク管理慣行を導入ないし改善する必要がある。多くの国々は国家デジタル安全性戦略で対応しているが、国家プライバシー戦略を整備している国はこれまでのところほとんどない。一方、プライバシーのリスクは、ネット詐欺、救済制度、ネット商品の質に関する消費者の懸念を増長しており、信頼感の足かせになっている他、企業と消費者の間の電子商取引の成長を鈍らせる恐れがある。大半の消費者保護政策は依然として電子商取引全般への信頼感醸成に力を入れており、P2P市場に浮上してきた新たな問題についてはまだ対処に乗り出したばかりである。

人工知能の興隆には重要な政策上、倫理上の問題が付随している

人工知能(AI)は主流化しつつあり、機械が人間同様の認知機能を果たすことを可能にしている。機械学習、ビッグデータ、クラウドコンピューティングによって強化されたアルゴリズムは、大規模なデータセットにおいて複雑化しているパターンを識別することができ、すでに一部の認知機能に関しては人間を凌いでいる。AIは、効率性や生産性の向上を約束する一方、既存の政策課題を増幅させるとともに、新たな政策上、倫理上の問題を提起する可能性がある。例えば、仕事や技能開発の将来に対する潜在的な影響や、監視と透明性、責任、義務、安心と安全との関連性の問題が考えられる。

ブロックチェーンの潜在的可能性は、技術的ハードルや政策課題にいかに対処するかにかかっている

ブロックチェーンは、信頼できる第三者のいない取引を可能にする。例えば、ブロックチェーンに基づく仮想通貨のビットコインは、いかなる中央銀行やいかなる他の金融機関からも独立して機能する。ビットコインだけでなく、ブロックチェーンのアプリケーションは、取引コストの削減、説明責任の促進、スマート契約による確実な執行の可能化により、金融及び公共部門、教育、「モノのインターネット」(IOT)など、多くの分野において機会を創出する。こうした潜在的可能性の多くを実現できるかどうかは依然として、技術的ハードルや、仲介者がいない中でいかに法律を執行するか、また、ブロックチェーンに基づくシステムに起因する不法行為に対する法的責任を誰に対してどのように負わせるかなどの政策課題にいかに対処するかにかかっている。

© OECD

本要約はOECDの公式翻訳ではありません。

本要約の転載は、OECDの著作権と原書名を明記することを条件に許可されます。

多言語版要約は、英語とフランス語で発表されたOECD出版物の抄録を 翻訳したものです。

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© OECD (2017), OECD Digital Economy Outlook 2017, OECD Publishing.
doi: 10.1787/9789264276284-en

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