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OECD Multilingual Summaries

Job Creation and Local Economic Development 2018

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10.1787/9789264305342-en

雇用創出と地域経済開発 2018年版

日本語要約

自動化、デジタル化といった技術革新は、生産性を向上させ収入を増やし新たな雇用を創出して生活水準の向上に寄与することができる。しかし、この新たな働き方の未来は格差を埋めるのか、それとも拡大させるのか。どのような労働者がロボットや人工知能に置き換えられるのか。どうすれば労働者はテクノロジーに適応しそれを活用できるのか。そして、これらの変化は様々な場所でどのように現れるのか。

本報告書では、地理的条件が働き方の未来にとって重要であることを明らかにしている。仕事の自動化リスクが他の地域と比べて高いところがある。テクノロジーによって促進される非標準的な雇用形態も、それぞれの国内において著しい違いがあり、質の高い雇用の機会を得ることに影響している。国家政策を地方や地域の行政機関の方策と協調させることで、社会的包摂の低下という代償を支払うことなく、生産性を高める自動化や、デジタル化を促すことが可能となる。

仕事の自動化の影響はOECD諸国間でも各国の地域社会の間でも一様ではない

自動化リスクの高い職業の地理的分布については、21のOECD加盟国の地域の間で、9倍以上の違いがある。全ての地域で、何らかの自動化リスクのある仕事が顕著な割合で存在する一方で、自動化リスクの高い仕事の割合が40%近くに達する地域(例えば西スロバキア)もあれば、4%ほどにすぎない地域(オスロ周辺)もある。それぞれの国において、自動化リスクの高い仕事の割合は異なる。カナダの景気が最も良い地域と悪い地域を比較すると、自動化リスクの高い仕事の割合の差は1パーセントにすぎないが、スペインでは12パーセントに達する。

2011年以降、多くの地域(60%)において、自動化のリスクが高い部門で失われた仕事より多くの仕事が、自動化リスクの低い部門で創出できたことは朗報である。自動化リスクのある仕事の割合が低い地域は、高学歴の労働者、強力な海外委託サービス部門を抱え、高度に都市化されている。すでに生産性の伸びが低く、失業率が高い地域は、将来、さらなる自動化の影響を受ける可能性が高く、その結果、業績不振の窮境をさらに悪化させることになる。それゆえ、政策当局は、生産性を高めるために自動化を促進させる必要性と、自動化による短期または中期の雇用喪失を管理する必要性との間で難しいトレードオフを迫られる。

各地域への自動化の影響は一様ではないため、地域間で雇用条件の格差が拡大する可能性がある。この格差に対処するために、政策では労働者のスキルと企業双方の向上を考慮すべきである。訓練と技能再教育のプログラムは、とりわけ食品調理補助やトラック運転手など、自動化リスクの高い仕事に就いている人を対象にすることが考えられる。雇用者を技能開発に関与させることは、地方の労働市場で必要とされる一連の技術を特定する上で重要である。特に自動化リスクの高い部門に依存している地域では、付加価値の高い新たな経済活動への移行を促進する政策も重要である。持続可能な生産プロセスへの投資につながる事業環境の創出により、そうした移行が後押しされる。

非正規雇用も不均等かつ不安定に増加している

技術が仕事の本質を変化させていることも、多くのOECD加盟国で非正規労働やパートタイム労働が増加している一因となっている可能性がある。ここでもやはり、政策立案において国内の格差を考慮する必要がある。例えば、ギリシャでは、2010年から2016年にかけて、非正規雇用の割合が7%増加した地域もあれば、11%減少した地域もあった。

非正規労働は、女性労働者や若年労働者、低学歴の労働者に多いが、地方経済の特徴もその決定要因となっている。未熟練労働者が期限付き契約で雇用される可能性は、都市よりも地方において高い。海外交易部門の規模が小さい地域では、非正規労働者を多く雇用する傾向がある。つまり、すでに不景気の地域では非正規雇用の割合が拡大する傾向があるということである。

概して、自営業者の割合は近年横ばいで推移しているが、雇用者がいない自営業者の割合は伸び続けている。その一因は、パートタイム自営業者の増加であり、この10年間で、OECD加盟31カ国中25カ国でこの現象が起きている。自営業の仕事の割合の地域差が、10%以上ある国もいくつかある。経済のデジタル化、特に「ギグ(gig、単発の仕事を受注する働き方)」という特徴がそれを後押ししており、ほとんどあるいは全く社会保障の対象とならない自営業の不安定な労働形態を助長してきた。不安定な自営業のマイナス要素に対処し、その地域で事業環境を改善する政策が重要である。

それでも、生産性と社会的包摂性は両立できる

テクノロジーは多くの仕事の労働生産性を高める傾向がある一方で、労働市場から次第に排除されるか、失業や低賃金の仕事、非正規労働に陥るグループも出てくるだろう。長期失業者や障害者、移民など不利な条件のグループを社会統合する政策は、社会的結束を促し、不平等に取り組む上で不可欠である。

OECD地域の中には、生産性が高いと社会的包摂性も高いという両者の密接な関係が実際に見られるところがある。しかし、一国内で生産性が同程度でも、社会的包摂性がより高い地域もあれば、低い地域もある。

OECD諸国の人口の約30%は、2006年以降、生産性と社会的包摂性(労働参加率で表される)の双方をうまく向上させている地域に居住している。しかしOECD諸国に居住している人の約半数は、生産性が伸びて社会的包摂性が低下している地域に居住している。ヨーロッパの都市は概して、南米、北米の都市に比べて、生産性と包摂性を効果的に向上させている。包摂性の複合指標として、もっと様々な雇用形態、スキル、収入の変数を考慮すると、各地域間に類似した傾向が見られる。

労働、イノベーション、そして交通政策まで、多くの政策分野が生産性にも社会的包摂性にも寄与している。その証として、様々な政策分野でその地域に合った対応の重要性が強まっている。本報告書では、脆弱なコミュニティや不利な条件下にあるグループに雇用前技能訓練を提供し、彼らをプログラムの企画や提供に参加させ、その取り組みを共同体主導の開発に組み込むことにより、そうしたグループの労働市場への包摂が強化されることを明らかにし、地元の政策的取り組みの一例を検討している。

社会的経済組織は不利な条件の人々の雇用を目的にしていることが多いので、これらの政策を補完する支柱となり得る。規制枠組みを改善して社会企業を支援したり、主流の融資(保証を含む)を利用できるようにしたり、必要性に応じた事業支援を行ったりすることが、社会的経済組織を押し上げる手段として考えられる。社会的経済組織は公共調達や雇用助成、長期の資金調達サイクルを通して、公共部門の支援からさらに恩恵を受けている。

© OECD

本要約はOECDの公式翻訳ではありません。

本要約の転載は、OECDの著作権と原書名を明記することを条件に許可されます。

多言語版要約は、英語とフランス語で発表されたOECD出版物の抄録を 翻訳したものです。

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© OECD (2018), Job Creation and Local Economic Development 2018, OECD Publishing.
doi: 10.1787/9789264305342-en

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