1887

OECD Multilingual Summaries

OECD Sovereign Borrowing Outlook 2016

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OECD国債借入アウトルック2016

日本語要約

国債発行による借入必要額は小幅で減少しているものの、償還プロファイルは依然として厳しい。OECD諸国の国債比率は過去の水準と比べて高止まりしている。

OECD地域の国債借入額は世界金融危機への政策対応の結果急増したが、財政再建の動きにより減少している。しかし、依然として借入額の方が償還額より多い。実体経済の減速を背景に、現在の国債の水準は過去の水準と比べて高止まりしている。借入見通し調査によると、OECD諸国政府の中央政府の2016年市場性国債発行総額は緩慢ながら着実に増加し、40兆米ドルを超えるとみられる。

中期国債及び長期国債発行残高の償還プロファイルは向こう2~3年、厳しい状態が続く。借り換えリスクに対処するため、債務管理者は償還プロファイルを長期化、平準化しようとする。イールドカーブ(利回り曲線)は総じて右上がりなので、こうした戦略は短期的には国債費の増加をもたらす傾向がある。しかし、国債費の予測可能性が増すという利点があり、これは現在、低金利という環境によって、限られたコストで達成されている。したがって、多くの債務管理当局(DMO)の資金調達戦略は一貫して長期の現地通貨建ての借入手段に頼っている。

債務管理者にとって流通市場の流動性は依然として大きな懸念材料である

債務管理の視点から、金融市場の流動性は借入コストにとって重要である。また、流動性が高いということは、国債市場が他の金融市場に信頼性の高い効率的な価格シグナルを、市場の混乱時や逼迫時においても発するために、極めて重要である。世界金融危機の勃発以降、非伝統的金融政策、新規制、投資家基盤の構造変化が国債市場の流動性に影響を及ぼしている。DMOは、流動性指標を監視する取り組みの強化、ディーラーの値付けに対する評価と動機付けを強化するための一連の措置の導入、DMO自体の発行戦略の適応などにより、流動性リスクの問題に対処している。

金融システムの規制変更(バーゼルIII、ソルベンシーII、CAC<集団行動条項>、MiFIDII<第2次金融商品市場指令>、ドッド・フランク法など)が発行市場の機能に対して有する含意に関する債務管理者の視点は、これらの新規制がディーラーのバランスシートをさらに圧迫し、市場の流動性と国債に対する需要に悪影響を及ぼす可能性があることを示唆している。しかし、現段階において国債発行市場に対するそれらの影響を完全に定量化することは困難である。規制変更とその影響への対応策として、債務管理者は最近、発行の戦略、手続き、手法を変更している。大半のDMOは入札の頻度を増やしており、中には投資家向けに入札後オプションファシリティやミニテンダー方式を導入しているところもある。

債務管理者は引き続き国債投資家基盤の構造変化を目の当たりにしているが、この構造変化も流通市場の流動性に影響を及ぼしている。特に、ソブリン債への投資家としての公共機関の重要性がこの10年で高まっている。この動きは、①量的緩和プログラム、②外貨準備の大幅な蓄積、③増加している政府系ファンドのリスク回避の投資戦略という3つの要因により牽引されている。公共機関は一般に民間投資家より安定した投資家グループと考えられている。しかし、公共投資家のシェアの高まりは、集中リスクや市場流動性に関する懸念を惹起する。こうした懸念を背景に、債務管理者は投資家基盤を多様化する重要性を認識し、発行戦略やIR政策を通じて投資方針や投資ホライズンが異なる様々な投資家を惹きつけることに注力している。

債務管理に関する業務や政策の透明性強化を求める投資家その他の利害関係者からの更なる圧力

世界金融経済危機の勃発及びそれに伴う国債発行による借入の激増以降、各国政府は債務管理に関する業務や政策の透明性強化を求める投資家その他の利害関係者からさらに強い圧力を加えられている。公債管理に関する戦略、業務、政策の透明性強化は投資家の不安を軽減し、国債市場の魅力を高めることに繋がる。延いては投資家基盤の厚みを増し、リスクプレミアムを低下させ、借入コストを軽減することになる。しかし、最大限の透明性は、機動性の低下や情報の過度の複雑化に繋がる可能性があるため、DMOにとっては理想的な戦略目標ではないかもしれない。

こうした事情を背景に、OECDの債務統計・業務・政策の透明性に関する作業部会(OECD Task Force on Transparency of Debt Statistics, Operations and Policies)は、現行のデータ配布慣行を調査し、国債管理者への具体的な提言を作成した。この作業部会は、債務統計を定期かつタイムリーに発表することの重要性を強調している。また、債務管理者は債務統計・業務・政策に関する情報開示に際して分かりやすさと入手しやすさに十分配慮すべきであるとも述べている。

主要な結論

  • 純借入必要額は2008年及び2009年のピーク時の水準から、また総借入必要額は2012年のピーク時の水準から、いずれも減少し続けている。
  • 長期債の発行シェアは近年上昇しており、2016年には2007年及び2008年の水準を約10ポイント上回る59%に達する見込みである。借入構成のこの変化により、市場性国債発行残高の平均残存期間は長期化している。
  • 長期債の市場性国債全体に占めるシェアは2016年には90%を超える見込みである。
  • OECD地域の長期債総発行残高の3分の1以上は、2015~2018年の3年間に償還期限を迎える見込みである。

© OECD

本要約はOECDの公式翻訳ではありません。

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