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OECD Multilingual Summaries

OECD Skills Outlook 2019

Thriving in a Digital World

Summary in Japanese

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OECDスキル・アウトルック2019年版

デジタル世界で活躍する

日本語要約

情報通信技術(ICT)や人工知能、ロボット工学などの最新デジタルテクノロジーは、人々の暮らしや働き方、学習の方法を変えつつある。デジタル化は生産性を向上させ、幸福を高める計り知れない可能性を秘めており、学習内容や働く場所や時間、社会とのかかわり方について、人々により強い力を与えることができる。しかしその一方で、デジタル化の波に取り残される人や地域があると、不平等を高めることにもなる。各国は、自国民のスキルを向上させることで、最新テクノロジーを各人にとってのより良い結果につながるようにすることができる。その実現のためには、スキルに関する各種政策を柱とする包括的で連携した政策介入が必要となる。

デジタル化した労働環境と社会で活躍するためにはスキルが極めて重要

スキルはデジタル機器の利用しやすさや実際の利用にみられる社会的格差(social divide: 経済、地域、人種、教育等による格差)の解消に役立つ

オンライン上で行える日常活動が増えている。あらゆる人々に最新テクノロジーを利用して複雑で多様な職務を実行することが求められるわけではないが、デジタル世界の一員になる上で必要なスキルを習得する機会を与える必要はある。

  • ブロードバンドインターネット接続が普及する中、適切なスキルがないということが、自宅でインターネットを利用しない大きな理由になりつつある。インターネットの利用が広まるにつれ、当初、インターネットの利用しやすさにおける格差を表す言葉であったデジタル格差(digital divide) は、今ではインターネットの活用法やオンライン上で行う活動から受けるメリットの違いと定義されるようになっている。
  • テクノロジーが発達した環境では、適切な水準の読解力、計算力、問題解決能力が重要である。人々はそれを身につけることでインターネットを情報通信のためだけに利用するのでなく、インターネットの利用がもたらすメリットを余すところなく享受し、インターネットを多様かつ複雑な方法で利用できるようになる。
  • ネットサーフィンは、複雑さを増している。そのためインターネットの利用者には、オンライン情報の背後にあるものを見極める課題解決スキル(conceptual skill)と認知スキル(cognitive skill)が必要となる。認知スキルが異なれば、オンライン上でどのような行動を取るかということに及ぼされる影響も違ってくる。認知スキルが十分に高ければ、オンライン上で自分の個人情報やセキュリティを保護できる可能性も高くなる。また、スキルの高い保護者や児童ならば、ネットいじめに合うリスクやインターネットの過剰使用に対して、より適切に対応することができる。

スキルは労働者がデジタル化する労働環境における労働市場の変化に適応する上で役立つ

デジタル化によって多くの仕事のやり方が変わりつつある。最新テクノロジーが開発されるスピードは加速しており、いずれ人員の余剰が生じることが懸念されている。その一方で、デジタルトランスフォーメーションは、新たな機会と雇用を創出している。デジタル化のメリットを十分に享受できるか否かは、最終的には、労働者がこうした変化に適応し、デジタル世界で活躍するために必要なスキルを習得できるようにする包括的な政策を各国が策定できるか否かにかかっている。

  • テクノロジーは自動化が容易な定型業務に従事する労働者の代替となり、独創性や問題解決能力、認知スキルが求められる業務を行う労働者を補うことができる。幅広い産業部門で機械学習や人工知能が進歩する中、減少する職種(スキル水準が低い定型業務に集中)から増加する職種(高度で非定型の認知スキルが特徴的)に移行する必要が生じる労働者は、ますます増えている。
  • デジタル化した職場で活躍するためには、労働者にはデジタルスキルだけでなく高い認知スキルや社会情緒的スキルなど、幅広いスキルが求められる。最新テクノロジーに結びついた成長が見込まれる職種では、高度なICTスキルの重要性も高まる。
  • 各国は訓練の面で重要な課題を抱えている。訓練に関する政策では、自動化されるリスクが高い仕事に従事している労働者が、新しく、より良質な仕事に円滑に移行できるようにする必要がある。労働市場はデジタル化に対応して変化しているため、各国政府は柔軟性と労働力の可動性を高める政策と雇用の安定を確保する政策のバランスを適切に図る必要がある。
  • テクノロジーによって特定の職種の労働市場における重要度が変わるため、各国政府は労働者が職種を変更したり転職したりすることを支援する教育・訓練に投資する必要がある。そうすれば、労働者は新たな雇用のチャンスをつかみ、失職するリスクを軽減することができる。
  • 本報告書では実践的アプローチを採用し、自動化されるリスクが高い職とそうではない職を隔てるスキルの差を分析している。注目したのは転職にあたり労働者に求められる認知スキルと職務遂行スキル、さらにこうした転職を円滑に進めるために必要な訓練の度合いである。その結果、賃金減少の程度がわずかでスキル過剰になる可能性も限られているという条件に合う転職が、半数強の職業について、少ない訓練努力で可能であることがわかる。
  • 分析速報によると、自動化されるリスクがある職業から転職する労働者を支援する暗黙の訓練費用は莫大な額になる可能性があるが、正確な評価は難しい。労働市場の移行を可能にするコストは国によって幅がある。これは自動化されるリスクが高い職業の雇用割合や教育・訓練政策のコスト、訓練の間接費、国民の職業・スキル分布などの要因に違いがあるためである。

デジタルトランスフォーメーションのメリットを享受する態勢には国によってばらつきがある

  • ベルギー、デンマーク、フィンランド、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スウェーデンなど少数の国々では、デジタル化が特に進んでいる。こうした国々では、国民もまた十分なスキルを身につけ、デジタル化のメリットを享受できるように設計された効果的な生涯学習制度のサポートを受けている。
  • こうした国々以外では、日本や韓国を含め、デジタルトランスフォーメーションを最大限活用する大きな可能性があるが、年齢層の高い労働者や成人が取り残されないようにする一連の政策を採用する必要がある。
  • チリ、ギリシャ、イタリア、リトアニア、スロバキア、トルコでは、個人と労働者のいずれも、デジタル化された世界で活躍するために必要な基本スキルが欠如していることが多い。こうした国々では、公式・非公式の生涯学習制度を大幅に強化して、生涯を通してスキルを向上させたり再教育を受けたりできるようにする必要がある。

スキル関連政策を柱とする包括的な政策を策定する

デジタル化は新しい学習の機会を数多くもたらす

教育現場でテクノロジーを利用すれば、デジタル化が進む未来に向けて学生のスキル習得に役立ち、革新的な教授法を促進し、学校教育の失敗を軽減することができる。学校でのICTインフラの利用可能性は、OECD加盟国の大半で普及し、2015年までに10人中ほぼ9人の学生が学校でコンピューターを利用できるようになっている。その一方で、コンピューターを利用する機会がある、利用しているというだけでは、学生の能力向上にとって十分ではない。テクノロジーが学生の成績にもたらす効果は、これをどのように授業に取り入れて指導や学習に役立てているかによって異なる。教師のデジタル能力は最新テクノロジーを授業で最大限に活用する上で役立つ。多くの国々がカリキュラムや教育指針へのテクノロジーの取り入れ方を再検討すべきである。

オープンエデュケーションや大規模公開オンライン講座(MOOC)は、生涯を通して知識を習得・発信し、スキルを磨く新しい方法である。しかし、MOOCを活用する可能性は、教育水準やスキルが高い成人の方がスキルの低い成人よりも高いため、MOOCのスキル開発の可能性にはさらに改善の余地がある。

誰もが生涯を通じて生活全般について学習できるようにする政策が必要である

あらゆる労働者と市民が労働環境や社会の変化に適応するためには、生涯学習の強化が重要である。国際的な調査によると、効果的な生涯学習制度は、教育の受けやすさと質を向上させるとともに、人生のあらゆる段階であらゆる種類の学習について充実した訓練を提供することに的を絞った各種政策の組み合わせにかかっていることがわかる。

各国は、生涯にわたる学習機会の不平等に対処し、学校のカリキュラムを求められるスキルの変化に適応させ、教師に効果的な訓練を施すことで生涯学習を促進することができる。また、成人教育と訓練制度を労働市場の変化に対応できるものにし、スキルの評価・認証制度を絶え間なく変化するスキルニーズに適合させる必要もある。

デジタル化がもたらす地理的影響を軽減する政策も必要である

デジタル化のメリットは都市部やハイテク地域に集中しているものの、デジタルテクノロジーを利用し、ハイテク地域の外に拠点を移して高い生計費を下げようとする企業も出始めている。オープンエデュケーションやMOOCも、青少年や若年労働者に高等教育を受ける機会を提供し、教師には良質な教育・訓練資源を提供するという意味で、地理的格差の解消の一助となりうる。そうすることで最新テクノロジーは、質の高い教師の不在や訓練機会の欠如、利用可能な情報源の不足に起因する不平等を緩和できる。しかし、スキル格差は、社会経済的地位や居住地域の違いによって幼年期から見受けられる。こうした格差を解消し、遅れた地域を支援するためには、幼児教育から職業教育・訓練までを網羅し、教育継続の機会均等も含む、質の高いスキル関連政策が必要である。

政策的取り組みには連携が必要である

生涯学習を促進する必要性と地理的不平等を阻止する必要性のいずれについても、デジタルトランスフォーメーションに対して、様々なスキルとその開発政策、開発主体を連携させる包括的なアプローチが必要である。OECDの"Going Digital and Future of Work"イニシアチブの中で強調されているように、教育、労働市場、税制、住宅、社会保障、開発、研究・イノベーションといった分野の政策を緊密に連携させることが極めて重要である。スキル関連政策は、この総合政策の柱でなければならず、それによってデジタル化が幸福を高め、生産性を向上させることにつながる。OECDは、各国と協力し、誰もがデジタル世界で活躍できるようにする共同の取り組みにおいて自らの役割を果たす態勢を整えている。

© OECD

本要約はOECDの公式翻訳ではありません。

本要約の転載は、OECDの著作権と原書名を明記することを条件に許可されます。

多言語版要約は、英語とフランス語で発表されたOECD出版物の抄録を 翻訳したものです。

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© OECD (2019), OECD Skills Outlook 2019: Thriving in a Digital World, OECD Publishing.
doi: 10.1787/df80bc12-en

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