1887

OECD Multilingual Summaries

Development Co-operation Report 2014

Mobilising Resources for Sustainable Development

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10.1787/dcr-2014-en

開発協力報告書2014年版

持続可能な開発のための資金調達

日本語要約

ミレニアム開発目標は2015年に達成期限を迎えるが、多くの開発課題は積み残され、その他の課題も浮上してきている。2015年以降の目標については、現在、国連総会の後援の下で、国際社会で議論されており、社会、環境、経済の問題が一連の「持続可能な開発目標」へと統合される。

『開発協力報告書』2014年版は、2015年以降の目標に関する3部作の2作目だが、これらの目標を達成するために必要とされる資金の調達に向けて、何ができるかを問いかけている。

持続可能な開発のための資金をどのように供給するか

最近まで、政府開発援助(ODA)は開発のための主要な資金調達源と見なされてきた(第1章)。しかし、より広範な地球規模の「持続可能な開発目標」への資金供給には、はるかに多くの資金が必要となる。同時に、ODAは開発を支える資金の一部にすぎない。2012年のODAは約1,350億米ドルで、OECD開発援助委員会(DAC)加盟29か国の援助総額(政府および民間資金)の28%に過ぎなかった。DAC諸国から開発途上国に供与された2012年の援助総額は4,740億米ドルだったが、この中には、ODAのほか、市場条件並みか商業的動機によって公的機関から供与される「その他の政府資金(OOF)」(第4章)、外国直接投資などの市場条件による民間資金(第5章)、慈善団体や非政府組織(NGO)から供与される民間無償資金(第8章および第9章)が含まれている。これは、開発途上国が利用できる資金オプションが多様性を増していることを反映したものである。これらのオプションは、ますます革新的になり、より多くの資金を調達できる大きな潜在的可能性を秘めている(第6章、第11章、第15章)。

『開発協力報告書』2014年版には様々なアイデアが収録・紹介されているが、これは、開発金融の分野において機会の新時代が到来している証である。開発途上国は南南協力(第3章)を通じて互いに支え合っている。財団、直接的寄付(第8章)、社会事業(第16章)は新たなオプションを提供しつつある。移民労働者からの送金も大きな可能性を秘めている。しかし、この種の金融の全てがODAと同じコア原則に立脚しているわけではなく、また、持続可能な開発を目標としているわけでもない。

したがって、他の資金との比較でODAの役割を新たに見直す必要がある。

持続可能な地球規模の開発を達成するための取り組みという文脈の中で開発協力の役割を見直す理由は、資金面以外にもある。

  • 持続可能な開発はもはや「北」が「南」を「援助」するという問題ではない。機会、責任、オプションをバランスよく共有するという問題なのである。
  • 自国の開発を自ら推進するとともに、自ら開発協力を提供する開発途上国が増えている(第2章)。
  • 貧困の削減と持続可能な開発はますます「パスポートなき問題」(problems without passports)の解決に向けていかに前進していくかにかかっている。「パスポートなき問題」とは、戦争と紛争(第19章)、環境と気候課題(第18章)、不安定な金融環境、不公正な貿易条件(第21章)、感染症などの従来の開発アプローチでは対処できない問題(第17章)である。

このような地球規模の課題に対処するには、全ての関係者の貢献が必要とされる。また個々の関係者は個別的行動と集団的行動に責任を負う必要がある。

ODAは依然として重要である

このように好機が到来するとともに課題も増えているという状況で、ODAは、特にそれが戦略的かつ「賢く」用いられる場合には、持続可能な開発において依然として非常に重要である。例として以下が挙げられる。

  • ODAは脆弱国や後発開発途上国に極めて重要な資金や支援を提供し得る。これらの国は、ODA以外の資金を呼び込んだり、調達したりすることが難しいからである(第19章)。
  • ODAは、リスクの分散や共有、インセンティブの創出などにより、リスクの高い状況において投資を魅力的にするために用いることができる(第11章、第12章、第15章)。
  • ODAは、被供与国が能力の構築や優良慣行の共有を通じて自国内の資金を調達したり、管理したりする助けになり得る(第7章、第14章)。
  • ODAは、投資や貿易などの分野における政策改革を通じて前向きな開発・投資環境の創出を支援し得る(第12章、第21章)。

開発はますます内部から維持されるようになる

開発途上国は次第に自らの潜在力を用いて自国の開発を推進し、「援助」依存から脱却しつつある。それは、例えば、以下により行われている。

  • 自国の租税制度の能力構築。絶対額ベースで、税収はODAを圧倒している。アフリカの2012年の税収総額はアフリカ向け開発援助供与額の10倍だった(第1章、第7章、第14章)。
  • 海外労働移民による母国送金の拡大を活かす創造的な方法の発見。多くの開発途上国にとって母国送金は最大の外国資金源であり、2012年には3,510億米ドルに達した。この額はODA、外国直接投資のいずれをも上回る(第10章)。
  • 他の開発途上国を含め、他国の企業による投資を呼び込むために必要な政策および環境の創出(第12章)。
  • 腐敗や違法な資金フローによる資金喪失への対処(第13章)。

次のステップ

世界は持続可能な開発に資金を供給することができる。資金はすでにそこにある。国際社会にとっての課題は、利用可能な資金調達オプションを吟味し、2015年以降の目標を達成するためにその利用、調整、追跡を行うことである。本報告書では主要な措置として、以下の項目を取り上げている。

  • ODAを最も必要としている後発開発途上国および脆弱国に重点的に供与し、そのODAを利用して他の資金を調達する。
  • 現在の金融環境上の目的に沿うようODAのコンセプトを設計し直す。
  • 2015年以降の地球規模の「持続可能な開発目標」を達成できる潜在的可能性を秘めているあらゆる資金源を革新的に活用する。
  • 2015年以降の「持続可能な開発目標」の達成に的を絞り込んだ取り組みに関する全ての資金供給者間の協力と相互補強を改善する。
  • 租税、金融、投資、貿易の分野における地域的および世界的な政策改革を支援し、国内政策と国際政策との整合性を確保する。
  • 違法な国際資金フローを阻止するために必要な立法と協力を強化する。
  • 気候の安定化、平和と安全保障などのグローバル公共財への資金供給面において政治的な勇気と革新力を発揮し、その実現に必要な構造と仕組みの整備に着手する。

© OECD

本要約はOECDの公式翻訳ではありません。

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© OECD (2014), Development Co-operation Report 2014: Mobilising Resources for Sustainable Development, OECD Publishing.
doi: 10.1787/dcr-2014-en

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