1887

OECD Multilingual Summaries

Nanotechnology and Tyres

Greening Industry and Transport

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10.1787/9789264209152-en

ナノテクノロジーとタイヤ

産業と交通のグリーン化

日本語要約

自動車の需要は2030年までに2倍に増加し、運輸交通部門の持続可能性に大きな圧力になると予測されています。この増加に対処し、環境、社会、経済への甚大な悪影響を避けるために、いくつもの方策をとらなければなりません。その方策には、例えば、公共交通サービスを増やして個人の自動車利用を減らすことや、環境に配慮した自動車の開発、より持続可能なタイヤの提供などがあります。実際、タイヤは、その生産に高レベルの天然資源を使い(例えば、天然ゴムと合成ゴムは化石燃料から作られます)、タイヤの転がり抵抗は自動車の燃料消費に影響を及ぼすため、交通部門が全体的に及ぼす環境影響の大きな要因となっています。

タイヤの持続可能性を向上させるために、新たな技術による解決策が模索されており、ナノテクノロジーはこの目標達成に寄与する技術の最前線にあります。タイヤの生産に新しいナノ材料を用いることで、製品のライフサイクル全体で持続可能性が高まると期待されています。新ナノ材料は、転がり抵抗を抑え(燃費の向上)、摩耗抵抗を改善する(タイヤの寿命の改善)一方で、ウェット・グリップと既存の安全レベルを維持することができます。しかし、ナノ技術をタイヤに用いることの政策的影響については、未だ不明確な部分が多くあります。特に、環境、健康、安全性のリスク(EHSリスク)については不確定な部分が残されており、ナノテクをタイヤ生産に利用するための具体的なリスク評価枠組みがないため、このようなリスクを効率的に評価できていません。

主な結論と提言

タイヤ生産における新ナノ材料の開発にあたって、EHSリスクを評価するための産業固有の指針がありません。この研究は、タイヤ生産におけるナノ技術利用のためのリスク評価指針を提供するものです。

新ナノ材料は、将来のイノベーションに向けた有望な手段で、タイヤ産業の持続可能性と資源効率に活用できると見られています。しかし、すでにいくつかの新ナノ材料が市場に出る寸前にあるにもかかわらず、EHSリスクについての不確定要素が、タイヤ生産における新ナノ材料開発に関する主な懸念となっています。EHSリスクを明らかにすることが難しいということも、ナノ技術の規制方法の不明確さにつながっており、それが開発の全段階におけるイノベーションにも影響しているようです。

一般的なEHS推奨慣行指針が、タイヤ産業がEHSリスクに対処する際の出発点になり得ますが、タイヤ生産におけるナノ材料利用に関わるリスクを評価するための、産業特有の指針がないということは、重大な欠陥です。この欠陥に対処するために、この研究の一環としてリスク管理枠組みが開発されました。これは、ナノ材料をタイヤの添加物として用いるための、工場または企業特有のリスク評価、またはリスク管理戦略を開発するために活用することができます。

産業特有の指針がないということは、ナノ技術を利用している他の産業部門にも影響する可能性があります。次のステップとして考えられるのは、他の産業部門における新ナノ材料導入の効果を改善する一助となる、さらなる産業特有の指針を開発することです。

EHSリスクの研究を支援する政策、およびナノ技術の研究成果の商業化を支援する政策は、タイヤ部門における信頼できるイノベーションを育成する上で不可欠です。

多くの政策、特にEHSリスク評価を明確化することを目的とした政策手段が、タイヤ生産への新ナノ材料導入に影響を及ぼします。この研究では、ナノ技術の信頼できる開発に関する知識の共有と協力を育成する政策が、不明確さを管理する上で重要な役割を果たし、タイヤ産業におけるイノベーションを明確に牽引することになると述べています。全般的に、公的投資が研究成果の商業化と、ナノ技術開発に関わる社会および環境問題への研究の発展に関わる問題に対処するための重要な手段になると見られていました。

交通部門のグリーン化と消費者意識を高めることを目的とした政策方途は、新ナノ材料の研究を含む、タイヤ産業における持続可能なイノベーションを牽引する重要な役割を担っています。

タイヤ産業におけるイノベーションは、供給網の様々な段階に関わる、次の3つの市場の要因に動かされています。1) より性能の良い「環境に優しい」タイヤへの需要;2) タイヤ製造業者間の競争;3) タイヤ生産に直接影響する主要な経済および環境問題(例えば、資源の枯渇、原料と石油のコスト増など)。

新車の燃費改善とCO2排出量削減のための政策方途、例えば自動車燃費基準などの活用を増やすと、低抵抗タイヤへの需要が増えます。タイヤが自動車の燃費に及ぼす影響を減らすための法制は比較的最近の措置で、転がり抵抗の最低基準は、その主な例です。より持続可能でコスト効率の良いタイヤへの需要とイノベーションを刺激するためには、タイヤの性能が向上していることが、消費者の目にも明らかになるようにすべきです。タイヤの標示付けと評価システムが、そのための手段となります。消費者意識を高めることは、実益を自覚、理解させる重要な要因です。このような手段はすべて、タイヤ産業における技術革新の牽引役を果たします。

ナノ技術応用の社会経済的、環境的影響についてより良い分析を行うために、一連の分析ツールを用いるべきです。

タイヤ生産への新ナノ材料導入に関わる将来的にあり得る影響の範囲についての推計は、タイヤのイノベーションに直接的、間接的に関わる様々な政策方途の立案と管理に重要な情報となります。ナノテクノロジーがタイヤ生産に用いられる場合の社会経済的、環境的影響を調べるため、この研究では、費用対効果分析、多基準分析、ライフサイクル分析など、多くの分析ツールが用いられました。

この研究では、高分散高表面積(HD‑HS)シリカとナノクレイについて特に詳細に調べ、これらが消費者に大きな純便益をもたらすとともに、環境負荷も削減すると結論づけています。しかし、正確な影響評価は、EHSリスクの不確定要素のために、実施が難しい場合が多くあります。定量的な費用対効果分析は、影響が正確に評価できるときに適しているので、EHSリスクが不明確な現状では実用的ではありません。したがって、ナノ技術利用によって生じる潜在的なEHSリスクに関わる新しくかつ不確定なコストを導入する可能性に対して、便益の重要度を決めなければなりません。

この研究で用いられたライフサイクル分析(LCA)からは、製品のライフサイクル、例えばタイヤの生産と利用というライフサイクル全体での環境面の改善が、HD‑HSシリカとナノクレイを利用することで、様々な環境影響カテゴリーで達成できることが分かりました。生産段階での節約がパーセンテージで表すと比較的高いですが、利用段階での節約の大きさのほうがはるかに大きくなります。しかし、定量的データが入手できなかったり、分析の完成に必要な情報とデータが機密とされていたりしたために、データの入手可否と利用可否の問題が、LCAの利用に影響しました。この一次データの欠如のために、この研究ではHD‑HSシリカとナノクレイについて確定的結果は述べておらず、またこれらの製品の比較も行っていません。しかし、基本的技術のタイヤとナノ技術を利用したタイヤの相対的な影響を評価するためのLCA枠組みを改善すべきという提言は、この研究に盛り込まれています。

様々な産業部門で新たなナノ材料を導入することによって生じる特定の問題に対処するには、政府と業界との協力が不可欠です。

上述の分析ツールを用いるには、政策レベルおよび企業レベルで良質なデータを入手する必要があります。この研究は政府と企業の関係者が協力してそれを可能にしてくれたことの恩恵を受けています。このような協力がなければ、様々な産業部門で新たなナノ材料を導入することによって生じる特有の問題に対処することは不可能です。したがって、データ収集の問題を抱える他の産業研究でも、同様の協力的アプローチが有益です。

© OECD

本要約はOECDの公式翻訳ではありません。

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© OECD (2014), Nanotechnology and Tyres: Greening Industry and Transport, OECD Publishing.
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