1887

OECD Multilingual Summaries

Agricultural Policy Monitoring and Evaluation 2015

Summary in Japanese

Cover
全文を読む:
10.1787/agr_pol-2015-en

農業政策:監視と評価2015

日本語要約

本報告書は、OECD諸国と世界市場の重要な様々な新興諸国を対象としている。これら49カ国は、世界の農業付加価値の88%を占めている。各国の農業政策には、農業がその国の経済において果たす役割の多様性を反映されている。しかし、国ごとの構造的な違いにかかわらず、各国は一連の共通目標を有しており、それを農業政策によって牽引している。すなわち、農業部門とより一般的には農村地域の生存能力(viability)を有効にすること、増加し富裕化している世界人口のニーズを満たせる栄養価の高い食料を生産すること、食料生産の長期的な環境的持続可能性を改善することである。これらの共通目標をどの程度重視するかは、政策アプローチにより異なっている。

OECDの生産者支持推定量(PSE)ベースで見ると、本報告書の調査対象国は全体として2012~2014年に年平均6,010億米ドル(4,500億ユーロ)を農業生産者に移転した。さらに、それに追加する形で、農業部門の全体的機能を支援する一般サービス関連として1,350億米ドル(1,030億ユーロ)を支出した。

OECD諸国と新興諸国の平均的な農業生産者助成は収斂してきている。新興諸国では平均的に1990年代の農業課税から多額の助成供与へと移行してきているのに対し、OECD諸国では平均的に極めて高い水準で推移してきた助成が減少している。近年、一部の新興大国の助成はOECD諸国が供与している平均的な助成額に匹敵するようになってきた。本報告書の調査対象国49カ国の全体で、2014年の農家総収入の18%は公的な農家支援策によるものである。

OECD地域全体では、市場価格支持や投入財補助などの政策手段から農業生産決定に直接影響しない政策への転換も徐々に進められている。こうした政策転換は国によってその程度も進められているスピードも異なるが、スピードが特に遅いのは助成や保護の水準が最も高い国々である。環境の持続可能性、イノベーション、リスク管理など、表明されている長期的な優先課題に対処する動きも見られる。こうした取り組みは強化すべきである。同時に、一部の新興国は逆方向に進んでおり、価格や生産関連の助成策の利用を増やしている。49カ国全体で、農家助成の67%は、価格、生産高、制約のない投入財使用と直接的に関連したものである。

勧告

各国は、農業の生産性と持続可能性の改善にかかわる長期的な問題への取り組みの強化に着手すべきである。政策当局は、農業部門が数々の課題に対処しやすくなるように、農業部門の「将来性を保証」することを最大の目的にすべきである。世界的に、農業は以下のような必要に迫られるだろう:1) 世界の人口が増加し富裕化することでより多様な食生活を求められるようになるため、より多くの食料を生産すること、2) 多くの開発途上国における経済成長と貧困削減に寄与すること、3) 土地と水という有限な天然資源を得るために競争すること、4) 生物多様性や土地と水の質の保全、脆弱な生態系の回復、気候変動への適応と緩和に貢献すること。

農業部門がこれらの課題に対応し、その経済的潜在力を十分に実現する能力を高めるためには、多くの場合、農業部門へ資金や人材を呼び込み、革新的な農業部門を育成できるよう、より広範な政策環境を改善する必要がある。大半の国の場合、既存の農業政策の周辺的な微調整より、他の政策(マクロ経済、貿易、社会、環境など)との整合性を高め、構造調整への障害を減らす包括的アプローチの方が効果的だろう。

こうした方向転換には、国および国際的レベルでの政策改革の終着点について明確なビジョンを持つ必要がある。より短期的には、以下に示す方策によって大きな利益を実現することができる。

  • 市場価格支持は最終的には廃止することを視野に入れて削減すべきである。市場価格支持は、対象が十分に絞り込まれておらず、意図された受益者に届かない。また、特に低所得国の場合には、消費者に多額のコストを課すほか、農家を市場の動きから切り離し、その生産決定を歪めてしまう。
  • 投入財補助も最終的な廃止を視野に入れて削減すべきである。投入財補助は、肥料など一部の投入財のコストを削減することで、これらの高額な農業投入財の過剰使用や濫用といったリスクに繋がり、結果的に環境に有害な影響を及ぼすことになりかねない。譲許的融資制度も、政府予算に大きな負担を課すとともに、往々にして農家の負債を増やしたり、固定資産の購入に充てられたりするなど、倫理欠如という問題を引き起こす可能性がある。
  • 所得と収入の安定化措置はその設計を注意深く評価すべきである。このような措置は納税者に高いコストを課す割にわずかな利益しかもたらさない場合がある。農業生産者が直面するリスクの中には市場メカニズムを使って管理できるものもあり、政府の助成は、農家が不可避的な事象や壊滅的な事象に対処するのを手助けすることに重きを置くべきである。
  • 直接支払いは、対象者や受益者が明確な場合や、目前の問題に即しているような場合には、環境便益の達成と関連した目標など、幅広い公共目標を達成するための効率的な代替策となり得る。農業が自然環境に及ぼす悪影響に関する懸念に対しては、市場ベースの解決策、規制、課税の組合せによって対処すべきである。
  • 土地所有者に対する一律の助成が正当化される場合はほとんどないが、直接支払いは農業政策の改革プロセスにおいて重要な一時的役割を果たし得る。農業部門が展開できるより幅広い環境に対してより大きな関心を払うべきである。農業政策は非常に重要であるが、より幅広い経済・社会・環境政策も重要な役割を果たす。

© OECD

本要約はOECDの公式翻訳ではありません。

本要約の転載は、OECDの著作権と原書名を明記することを条件に許可されます。

多言語版要約は、英語とフランス語で発表されたOECD出版物の抄録を 翻訳したものです。

OECDオンラインブックショップから無料で入手できます。 www.oecd.org/bookshop

お問い合わせはOECD広報局版権・翻訳部にお願いいたします。[email protected] fax: +33 (0)1 45 24 99 30.

OECD Rights and Translation unit (PAC)
2 rue André-Pascal, 75116
Paris, France

Visit our website www.oecd.org/rights

OECD

OECD iLibraryで英語版全文を読む!

© OECD (2015), Agricultural Policy Monitoring and Evaluation 2015, OECD Publishing.
doi: 10.1787/agr_pol-2015-en

This is a required field
Please enter a valid email address
Approval was a Success
Invalid data
An Error Occurred
Approval was partially successful, following selected items could not be processed due to error