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OECD Multilingual Summaries

OECD Science, Technology and Industry Scoreboard 2017

The digital transformation

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10.1787/9789264268821-en

OECD科学技術・産業スコアボード2017

デジタル変換

日本語要約

移動性、クラウドコンピューティング、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)、ビックデータ解析などは、今日のデジタル経済の中でも最も重要な技術である。これらが一体となって、あらゆるものがスマート化する「Smart Everything」が実現し、企業、消費者、そして社会全体が活性化される。OECD『科学技術・産業スコアボード2017』は、デジタル変換が科学、イノベーション、経済、人々の仕事と生活にどのような影響を及ぼしているかを明らかにしている。本書は、目まぐるしく変わるデジタル時代において、政府がより効果的な科学、イノベーション、産業政策を策定できるよう寄与することを目的としている。本書の主な考察は以下のとおりである。また、本書で取り上げる全てのテーマに含まれるデジタル技術の傾向に焦点を当てている。

デジタル革命は加速度的に進展

2012~2015年にかけて、中国、台湾、韓国、日本、米国は、最先端情報通信(ICT)技術上位20位までの70~100%の開発を担っており、特に日本と韓国は、あらゆる領域の情報通信技術において技術革新を進めている。世界で上位5か国の特許庁(IP5)で特許認定された発明数を見ると、AI技術は2010~2015年に毎年平均6%増加しており、これは全特許の年間平均増加率の2倍である。2015年にはAIに関する特許が世界全体で18,000件申請されており、その62%を日本、韓国、米国が占めている。医療診断分野での特許出願の約30%に、AI関連の部品が含まれている。

科学大国がデジタル革命を促進

過去15年間に、中国は影響力の強い高い科学分野での取り組みを3倍に増加させている。最も多く引用された上位10%の出版物の比率で測ると、中国(14%)が米国(25%)に次ぐ世界第2位の科学大国ということになる。米国は機械学習の研究でトップだが、中国がそれに続いている。インドもこの競争に参入しており、この分野における発表論文の3分の1を占めているが、論文の質で調整すると、英国に次ぐ第4位である。機械同士のコミュニケーション(M2M)がIoT実現の鍵を握っている。2017年6月には、中国が全世界のM2Mシムカード加入数の44%を占めており、米国のシェアの3倍となっている。

最先端技術は高度に集約されている

研究開発(R&D)は高度に集約された事業である。各国内では、一握りの企業が企業R&D全体のの大部分を担っている。カナダや米国では、R&Dを行う国内上位50社が、R&D事業の40%を占めており、ドイツと日本では55%を占めている。世界全体でR&D企業上位2,000社の本社は、ごく少数の国々、とりわけ米国、日本、中国に集中しており、これらの国のR&D支出総額の70%は、上位200社に集中している。これら2,000社のR&D企業がデジタル技術の開発をリードしており、世界のICT関連特許の約75%と、ICT関連の設計仕様の55%、IP5のAI関連のパテントファミリーの75%を所有している。

デジタル変換の恩恵は全産業部門に公平に行き渡っていない

ICT機器の製造に関連した付加価値製品の多くは、経済の様々な業種で作られる。ICT財・サービスに対する世界全体の需要に埋め込まれているICT産業以外の付加価値で、他の産業部門が寄与しているもの(例えば、スマートフォンの画面に使用されるガラス)は、付加価値全体の19~34%を占めており、中国においては41%に達する。デジタル変換は全産業部門に影響を及ぼしているが、その程度には差がある。デジタル集約的な産業部門を新たに分類すると、電気通信とITサービスが、デジタル集約度という点で常にトップの位置を占めているのに対して、農業、鉱業、不動産業は常に最下位である。その他の産業部門に関しては、様々な指標で均一ではなく、デジタル変換の進み具合は多様である。今日ではICT無しで成り立つ事業はほとんどないが、その影響は事業に組み込まれるICTツールの種類と技術レベルによって異なる。例えば、OECE諸国のほとんどの企業がブロードバンドを利用しているが、2016年にクラウドコンピューティング・サービスを利用していると答えた企業は25%にとどまっている。そのうち、中小企業は22%で、大企業が47%である。

幅広い技能が求められる

新技術を創造、採用、有効活用するには、相応のスキルが必要である。労働者がICTを仕事により集約的に利用している国々(例えば、オランダ、ノルウェー、ニュージーランド)では、比較的複雑な作業を伴う「非定型業務(non‑routine jobs)」の割合が高い。ICTの利用度が平均的な仕事よりも10%高い仕事に従事している労働者は、時給が4%程高い傾向がある。しかし、ICTの技能のみでは、デジタル経済において成功するのに不十分である。労働者は、ICTと管理技能、コミュニケーション技能が求められる仕事に従事することで、より高い報酬を得られる。デジタル集約度が高い産業の労働者は、認知スキル(例えば、読解力、数的思考力、問題解決能力)と非認知的社会的スキル(例えば、コミュニケーション、創造力)の双方において高い能力を示している。

インターネットに接続する人は増えているが、格差は残っている

インターネットと接続機器は多くの人々の日常生活に欠かせないものになっており、現在では、いくつかのOECD加盟国においてその利用者の割合はほぼ100%に達している。ブラジル、中国、南アフリカでは16歳から74歳の人口の50%以上がインターネットを利用しており、OECD諸国との差は縮小している。オンラインアクセス技術のコストがさらに低下し、現在の「デジタル世代(digital natives)」が成人になると、この差はさらに縮小する。6歳までにインターネットを利用したことがある生徒の割合は、OECD諸国では17%、デンマークでは30%に達している。しかし、OECD諸国の大半では、若年世代と高齢者世代、学歴の違い、都市部と地方、様々な規模の企業などの間で、デジタル技術の理解度と利用度に大きな差がある。

女性はデジタル変換に乗り遅れている

OECD地域では、自然科学、工学、ICT分野の学位取得者の約30%が女性である。科学論文の執筆者に占める女性の割合は22%に過ぎず、この割合は、この割合は、職業として文章校正や編集の仕事に携わる人や、研究に専念する執筆者というサブグループではさらに低い。女性発明者が関与する特許の割合は、オーストリアの4%からポルトガルの15%まで、国ごとに差がある。仕事に関しては、個人の状況と職種を勘案しても、女性の賃金は男性より大幅に少ない傾向がある。スキル、特にICTスキルが、各国の男女間賃金格差の一因である。他の条件が等しければ、ICT関連の技能を身につけることで得られる見返りは、女性にとっての方が男性よりも大きくなると推計されている。したがって、女性を訓練してもっと多くのICT技能を与えることは、女性の賃金の増やし、男女間賃金格差の縮小に寄与する可能性がある。

© OECD

本要約はOECDの公式翻訳ではありません。

本要約の転載は、OECDの著作権と原書名を明記することを条件に許可されます。

多言語版要約は、英語とフランス語で発表されたOECD出版物の抄録を 翻訳したものです。

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© OECD (2017), OECD Science, Technology and Industry Scoreboard 2017: The digital transformation, OECD Publishing.
doi: 10.1787/9789264268821-en

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