1887

OECD Multilingual Summaries

The Heavy Burden of Obesity

The Economics of Prevention

Summary in Japanese

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肥満という重荷

予防の経済学

日本語要約

OECD諸国では太りすぎの人口が増加しており、それによって各国のGDPが推計で平均3.3%押し下げられている。腹囲が太ることが原因となっている健康問題は、運動量が増えず摂取カロリーが増えることによるもので、常習的な欠勤を増加させ生産性を下落させている。太りすぎが進行すると、健康、富と幸福を損ない、子供の学業成績を悪化させ、成人の失業リスクを高め、寿命を縮める。

OECD諸国では、今後30年間で9,200万人もの人々が肥満関連疾患で死亡し、平均余命は2050年までに3年縮小する。

本報告書では、OECD加盟国、EU加盟28カ国、G20諸国 を含む最大52カ国における肥満または太りすぎの人口の増加がもたらす経済面、社会面、医療面におけるコストを分析している。同報告書は、世界各地で高まる健康問題に取り組むうえで、今後予測される支出、政策の有効性、投資利益率を検証し、健康的な生活を推進する政策への投資を拡大することが経済的に急務であることを論証している。

肥満増加という問題

OECD加盟36カ国中34カ国では、人口の過半数が太りすぎで、ほぼ4人に1人が肥満である。OECD諸国の成人肥満率の平均は、2010年は21%だったが2016年には24%に上昇した。つまり、肥満人口が5,000万人増えたということである。この10年間、肥満の増加を抑えるための取り組みが行われてきたが、座りっぱなしのライフスタイルが一般化するなか、OECD諸国における供給カロリー(消費可能なカロリー)は過去50年間で20%近くも増えており、さらなる取り組みが求められている。

肥満と太りすぎの人の割合が高まると社会の不平等が拡大する

肥満の代償が特に大きいのは子供である。太りすぎの子供は、健康的な体重の子供に比べて、学業があまり振るわず、成績が劣り、学校を休む頻度が高く期間も長くなる傾向がある。肥満の子供は、健康的な体重の子供とくらべて優秀な成績を収めている確率が13%低く、成長して高等教育を修了する可能性も低い。肥満の子供は生活満足度が低く、いじめに遭う可能性が最大で3倍高くなり、それが学業成績の不振につながっている可能性がある。

成人後は、太りすぎに関わる慢性疾患を1つでも患っている人は、翌年就職できる可能性が8%下がる。このような労働者が仕事についても、欠勤率が最大で3.4%高くなるか、生産性が低くなる。また、肥満の成人は慢性疾患リスクが高く、平均余命も短い。EU加盟28カ国では、最低所得層の肥満率は、最高所得層に比べて女性で70%、男性で30%それぞれ高くなっており、格差を固定化させる要因となっている。

太りすぎは国民の健康、医療予算、経済に悪影響を及ぼす

OECDの分析によると、OECD加盟国、EU加盟28カ国、G20諸国では、太りすぎとその関連の疾患が原因で、2020~2050年の間に平均余命が約3年短縮される。

体重と身長に基づいて太りすぎか痩せているかを判定する体格指数(BMI)の高い人が増え、糖尿病、癌、心疾患といった太りすぎが原因の慢性疾患治療に要する費用がかさむことによって、医療予算が圧迫されている。OECD諸国では、医療予算の約8.4%が太りすぎが原因でかかる疾患の治療に費やされている。

太りすぎの人は健康な体重の人に比べてより多くの医療サービスを利用し、より多く手術を受け、2倍を超える処方薬を使用する。OECD平均で見ると、糖尿病の治療コストの71%は太りすぎによるもので、循環器疾患と癌についても、それぞれ治療コストの23%と9%を過体重関連が占めている。

OECDの分析によると、OECD加盟国、G20諸国、EU加盟28カ国の他、OECD加盟手続き中の国や一部のパートナー諸国など、分析対象となった52カ国における太りすぎが原因の疾患の治療費は、購買力平価ベースで年間推計4,230億米ドルに上る。

OECD全体で見ると、高BMI値とそれに伴う症状は、平均で1人当たり年間200米ドルを超えるコスト負担をもたらしている。

OECD加盟国、EU加盟28カ国、G20諸国にとって太りすぎへの取り組みは価値ある投資である

実質的にOECDの全加盟国において、肥満に関する国レベルの行動計画が策定されており、ほとんどの国は、健康的な食事と活動的なライフスタイルを推進するために国としてのガイドラインを示すだけでなく、子供の肥満に対する具体的な行動計画を策定している。だが、対応策の強化が必要である。

肥満予防への投資は、最大で投資額の6倍を超える経済利益をもたらすことが、OECDの分析で示された。

OECDは、肥満問題に取り組むための4つの政策分野を示し、各国が肥満の蔓延に対処する上でより大きな影響と一貫性を持つ3つの有力な「政策パッケージ」の効果を測定している。例えば、食品・メニューの表示、不健康な食品の子供向け広告の規制、医師や学校による運動の奨励といった措置が分析対象となっている。

これまでの分析で、例えば、高エネルギー食品のカロリー含有量を20%減らすことができれば、個人の健康と各国経済に 大きな効果があることがわかっている。そのような計画が世界42カ国で実施された場合、心疾患を始めとする慢性疾患の発生件数を年間100万件以上抑制できることをOECDモデルは示唆している。

© OECD

本要約はOECDの公式翻訳ではありません。

本要約の転載は、OECDの著作権と原書名を明記することを条件に許可されます。

多言語版要約は、英語とフランス語で発表されたOECD出版物の抄録を 翻訳したものです。

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© OECD (), The Heavy Burden of Obesity: The Economics of Prevention, OECD Publishing.
doi: 10.1787/67450d67-en

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