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OECD Multilingual Summaries

How's Life in the Digital Age?

Opportunities and Risks of the Digital Transformation for People's Well-being

Summary in Japanese

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10.1787/9789264311800-en

デジタル時代の人々の幸福

デジタル転換が人々の幸福にもたらす機会とリスク

日本語要約

デジタル時代の人々の幸福

デジタル転換は人々の生活と幸福にどのような影響を及ぼすのか。デジタル技術は、人々の働き方、消費の仕方、コミュニケーションの方法を短期間で根本的に変化させた。この急速な変化を理解するには、統計の手助け必要がある。本報告書は、「How’s Life?」シリーズで初めて特定のテーマに焦点を当てたもので、このニーズに応えるために、デジタルが人々の生活に与える影響を包括的に捉え、重要なデータの不足している部分を明らかにしている。

デジタル転換は人々の幸福に機会とリスク双方をもたらす

デジタル技術が経済社会に及ぼす影響については、すでにいくつものOECDの報告書にまとめられているが、本報告書は、「How’s Life?」の幸福度の枠組みを用いて、デジタル転換が人々の生活全体にどのような影響を及ぼすかを評価している。第1章では、本報告書の方法論と結果を概説している。OECDの幸福度の枠組みを用いて、人々の克服の11の側面(所得と富、雇用と収入、住宅、健康状態、教育と技能、仕事と生活のバランス、市民生活とガバナンス、社会とのつながり、環境の質、個人の安全、主観的幸福 )にデジタル転換が与える影響を考察する。またこの章では、デジタル転換の分野横断的な切り口として、情報通信技術(ICT)の利用可能性と実際の利用状況にも注目している。既存の多数の調査について概要を示し、デジタル転換が人々の幸福に及ぼす39種類の主な影響を明らかにしている。それによると、デジタル技術により情報の利用可能性の境界が広がるとともに人々の生産性が高まるといったプラスの影響が期待される一方、ネットいじめや、虚偽情報、サイバー・ハッキングの出現など、人々の幸福にリスクをもたらす可能性もある。

本報告書では、デジタル転換の主な影響を33の指標にまとめているが、その中には、デジタル化の機会をモニタリングする20指標と、デジタル化のリスクを反映する13指標が含まれている。この実証的分析は、自国のデジタル化の状況の表かに関心を持つ政策当局や市民に裨益するものである。ただし、実証的分析には統一的なデータが欠如しており、デジタルの主な影響が完全には網羅されていないという、重要な限界もある。国際的な統計コミュニティは、入手可能な情報の改善を図り、この統計上の課題を前進させるために投資をするべきである。

安全なデジタル技術はそれを利用するスキルを持つ者の生活を向上させる

第2章では、幸福度の各側面について、デジタル転換がもたらす機会とリスクの証拠を挙げている。この章は、様々な分野における多数の科学的調査の検討を基礎としている。そこから得られた主な洞察は、安全なデジタル技術により、それを利用するスキルを持つ者の生活が改善されるということである。このメッセージには2つの側面がある。デジタル化の機会を活かすには、第1に一定のスキル要件を満たすこと、第2に安全なデジタル環境が確保されることが重要である。一方では、デジタル技術は、より多くの情報にサービスにより安価にアクセスできるようにすることで、人々の生活を改善し得る。例えば、教育や医療情報へのアクセスやネットショッピングによる消費財の購入を容易にするほか、在宅勤務によって通勤時間を削減し、家庭や都市全体でのエネルギー利用効率を向上させる。つまり、人の活動の効率を高めるのである。他方、デジタル技術を利用するスキルを持つ者と持たざる者の間にデジタル格差が生じるため、社会に大きな不平等が生まれる恐れがある。こうしたスキルには、純粋なデジタルスキルだけではなく、オンラインの世界を安全に往来するための感情的、社会的スキルも含まれる。こうした様々な技能を有することは、便宜上「デジタル・リテラシー」と呼ばれ、人々がデジタルの生活と現実の生活を調和的に結び付け、デジタル技術の濫用に伴う精神衛生上の問題を回避するための前提条件である。2つ目のタイプのデジタル・リスクは、ネットいじめやサイバー・セキュリティ違反といった安全性の問題に関係する。簡単に言えば、デジタル化を人々の幸福に役立てるには、デジタル化の機会を平等にし、幅広いデジタル・リテラシーを構築し、デジタル・セキュリティを強化する必要がある。

デジタル化の機会は当然ながらインターネットの利用が普及した環境で生じるものであり、デジタルリスクは多面的である

機会とリスクの様々な指標を利用することで、各国を取りまとめてデジタル面の相対的な強みと弱みを特定することができる。デジタル転換に伴う機会とリスクの促進要因を理解することは、本報告書の範疇ではないが、そこからは多くの重要な洞察が得られる。第1に、どの国でもデジタルによる機会とリスクの間に相関はなく、この2つは機械的に関連するものではない。つまり、優れた政策枠組みがあれば、デジタルが多用される環境でもリスクを削減できるということである。第2に、デジタル化の機会は、インターネット・アクセスの広範な普及と強く関わっており、こうした状況は、デジタル転換がもたらす機会を捉えるための必要条件ではあっても十分条件ではない。最後に、リスクの性質は極めて多様であり、主要因を1つだけ選び出すことは不可能である。しかし、デジタル・セキュリティに関わる事件の多さからは、リスクが至る所にあることが予測できるとともに、デジタル社会の成熟度と、各国のデジタル戦略の健全性を(ある程度)反映している。

影響に関する証拠は少なく、多くのトピックはまだ議論されている段階

本報告書の結論は、すべての生活要素とOECD全加盟国が網羅されているわけではない、不完全な指標に基づいている。その意味で、本書は、今後の統計整備の動機付けとなるものである。進捗状況の補完的測定値の収集が引き続き推進されているが、各国統計局とその他のデータ収集者は、デジタル転換が幸福に与える影響に関する証拠を得られやすくする、新たな手段を考案する必要がある。重要なことは、本報告書で論じた多くの影響について、結論がまだ出ていないということである。オンライン・ネットワーキング・サイトが人々の社会生活に与える影響、過度なインターネット利用による精神衛生上の影響、仕事の自動化の影響など、重要な機会とリスクについてはまだ研究者やアナリストが議論している段階である。本報告書は、現時点の証拠を検討したものであるが、本書で取り上げた多くのトピックについて知識を広げ、深めるために、引き続き調査研究を行う必要がある。

© OECD

本要約はOECDの公式翻訳ではありません。

本要約の転載は、OECDの著作権と原書名を明記することを条件に許可されます。

多言語版要約は、英語とフランス語で発表されたOECD出版物の抄録を 翻訳したものです。

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© OECD (2019), How's Life in the Digital Age?: Opportunities and Risks of the Digital Transformation for People's Well-being, OECD Publishing.
doi: 10.1787/9789264311800-en

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